【たまゆら語り】2010年9月8日 OVA『たまゆら』の舞台を求めて

2023年1月3日 更新
2010年9月8日。
 
早朝、三原のカラオケボックスを後にして、再び呉線で竹原へ向かいました。

呉線の車内は人もまばらでした。僕は人のいない電車内や、車窓の風景、停車した駅のホームなど、写真を撮りながら、竹原へ向かっていました。

後に『たまゆら』の舞台として登場する忠海駅も、うさぎの看板が気になったのか、写真が残っていました。
 
やがて、2度目となる竹原駅に到着しました。

今は閉店してしまった竹原駅のキオスクの写真も残っていました。
 
竹原駅の改札を出たところで、昨夜、泊まるところのアドバイスをくれた駅員さんに再会しました。これから竹原を見て回ろうとしていることを伝えると、駅員さんは、「竹原はいいとこじゃけぇ」と笑顔で送り出してくれました。
 
その時、僕は、こうやって地元のことを笑顔で伝えることができる人が居る場所を舞台に選んだ『たまゆら』という作品は、きっと優しい物語になる、と感じていたのでした。

駅員さんと別れ、竹原駅を出て、OVAたまゆら』に登場する舞台探しの旅が始まりました。

僕がこの時点で得ていたOVAたまゆら』の舞台のヒントは、メインビジュアルや、公式PVの背景くらいのものだったと思います。すでに作品の舞台を訪れた方の情報発信もほとんどないタイミングだったと思われるので、とにかく歩き回って探しました。

まだ『たまゆら』の看板がかかっていない頃のたけはら観光案内処です。

やがて、アニメ『たまゆら』のキャラクターである「ももねこ様」を主役にした奇祭「ももねこ様祭」が開催されることになる竹原駅前商店街あいふる316です。

あいふる316を抜け、竹原町並み保存地区方面へ歩いていくと、川が見えてきました。OVAたまゆら』メインビジュアルは左手に川が流れていたので、きっと、この川伝いに歩いていけば、メインビジュアルの場所にたどり着けるはず…!と、歩を進めていきました。

2023年1月7日 更新
 
しばらく歩くと、遠くに山の稜線が見えてきました。田畑の緑色が、歩道の左手に広がっていきました。1枚のメインビジュアルに描かれた風景と、自分が見ている風景の雰囲気が、どんどん近づいてくるのを感じていました。そして、その風景が重なりました。

これが、僕にとって、"アニメ『たまゆら』で描かれた場所に訪れた"という、初めての実感となりました。

この時は、まだOVAたまゆら』本編を観たことがなく、一人旅の道中のイベントのひとつとして、竹原を巡っていました。与えられた宝の地図をヒントに、その場所を探すイベントとして、僕はこの場所にたどり着いていました。作品の舞台を訪れて、その物語やキャラクターに思いを寄せることも、この時はなかったのです。ただ、探していた場所に自力でたどり着いたという達成感が強かったように思います。

 

OVAたまゆら』のメインビジュアルの場所を訪れるという、一番大きな目的を達成した僕は、その後も、しばらく周辺を歩いて回りました。

登校する小学生たちの列、川沿いの廃屋と思われる商店、錆びついた自販機、「中国自然歩道」と書かれた古木の標識。足元をささっと、沢蟹が横切っていきました。静かで、ゆるやかな時間が流れていました。

昨日は日が暮れていて全容を見ることができていなかった竹原町並み保存地区へ向かうことにしました。

やがて、「お寺でのアニメイベント」という前代未聞のイベントを開催することになる照蓮寺も、この時に初めて訪れていました。

照蓮寺|観光スポット|竹原市公式観光サイト ひろしま竹原観光ナビ

西方寺・普明閣にも、この時、初めて訪れました。割とOVAたまゆら』に登場するカットと似たような写真があるのは、PVなどに普明閣のシーンが登場していたからでしょうか。*1

僕は普明閣の舞台に腰を下ろして、竹原の町並みを見渡しました。9月上旬、まだ夏の日差しが残る頃。心地よい風に吹かれながら、横浜からここまで旅を続けてきたことをぼんやりと思っていました。

町並み保存地区を離れ、あてもなく、竹原の路地をぶらぶらと歩き始めました。すると、いかにも貧乏旅行をしている風の僕が目に留まったのか、おじいさんに話しかけられました。僕は、青春18きっぷを使って一人旅をしていること、横浜から来たことを、おじいさんに伝えました。おじいさんは昔、横浜で働いていたことがあるということで、横浜のどこら辺から来たの?と、広島の地で、思わぬ地元トークになったのでした。

ここで、後に何度も耳にすることになるフレーズ…。「たまゆらの素敵な不思議」を、僕は体験することになります。

おじいさんは、せっかく遠くから来てくれたのだから、良かったら、車で景色の良いところまで案内しようか?と、僕に尋ねました。僕は、いきなり見ず知らずの人の車で案内してもらうのも、気が引けるな…と思いながらも、こういう体験がしたくて、旅をしているのかもしれないな…とも、思いました。僕はおじいさんに、車での案内をお願いすることにしました。

おじいさんの車に乗り込み、たどり着いたのは…。

後に、アニメ『たまゆら』本編に登場することになる、エデンの海パーキングエリアでした。

エデンの海パーキングエリア|観光スポット|竹原市公式観光サイト ひろしま竹原観光ナビ

僕は、アニメ『たまゆら』本編に登場する前に、先行してその舞台を訪れるという、これまでになかった経験をすることになったのでした。まさに、たまゆらの素敵な不思議―。

エデンの海からの帰り際、的場海水浴場にも連れて行ってもらいました。実はここも、後にアニメ『たまゆら』に登場する舞台です。

的場海水浴場《7月16日~8月15日》|体験|竹原市公式観光サイト ひろしま竹原観光ナビ

この後、おじいさんは、僕を竹原駅まで車で送ってくれました。徒歩では、見ることが難しかった竹原の風景を、おじいさんは僕に見せてくれました。

竹原駅の駅員さんもそうでしたが、僕が出会った方は、きっと、この町が好きで、紹介したい気持ちを自然と持っている方達でした。そういう人々に出会うことによって、初めて訪れた竹原の町は、僕にとって、特別な旅の思い出として刻まれていきました。僕が今でも竹原を好きで、また訪れたいと思うのは、このような原体験があったからなのかもしれません。

おじいさん、今もお元気でいるでしょうか。その節は、ありがとうございました。僕は今でも、竹原を訪れています。

*1:この時、まだ僕はOVAたまゆら』本編は未視聴でした。